幻影の泥沼
長い長い土管を抜けるとヘドロの国だった。すべてが灰色の霧に包まれ、腐臭が鼻をついた。足元に広がる粘ついた泥の中で、かつてここが美しい自然に囲まれた場所であったことを想像するのは困難であった。
エイジは、小さなランプを頼りに慎重に一歩一歩を進めた。祖父が語った伝説の場所へと繋がる道は、今や絶望的な光景の中にあった。「ヘドロの国にたどり着いた者は、永遠の知識を手に入れるだろう。」祖父の話に魅せられたエイジは、ここまで来たのだった。
歩くたびに、泥の中から奇妙な音が響く。ふと足元に硬いものが当たった。エイジはしゃがみ込み、それを取り出した。それは錆びついた鍵であり、見覚えのある紋章が刻まれていた。それは祖父の家の門に刻まれていたものと同じだった。
やがて、遠くに朽ち果てた塔が見えてきた。塔の周りには、ヘドロの中から無数の触手のようなものが伸びていた。エイジは恐る恐る近づき、塔の入口にたどり着いた。鍵を差し込むと、驚くほど滑らかに回り、重い扉が開いた。
扉の内側には、薄暗い階段が続いていた。エイジはランプを高く掲げ、一段一段を慎重に登っていった。塔の最上階にたどり着いたとき、彼の目の前には古びた書物がずらりと並んでいた。埃をかぶったそれらの書物には、見たこともない言語が記されていた。
エイジは一冊の書物を手に取り、ページをめくった。すると、そこには祖父が語った伝説の詳細が記されていた。「永遠の知識を手に入れた者は、代償としてこの地に留まらなければならない。」エイジはその言葉に震えながらも、目を離すことができなかった。
外のヘドロの国は、彼を待っていた。彼がこの知識を得る代償として、この地に留まることを決意した瞬間、塔の外で何かが動き出したようだった。エイジは一歩踏み出し、書物の中の秘密を手に入れるために、永遠にこの地に留まる覚悟を決めた。